同じ月を見てた

今夜の東京の空には、白く光る綺麗な満月が浮かんでいる。2月の満月はSNOW MOONと呼ぶそうだ。GOING UNDER GROUNDの数ある名曲の中に「同じ月を見てた」という曲がある。冬空の月を見て、違う道を歩く大切な人へ想いを寄せるラブソング。1番のサビの歌詞はこうだ。

出会ってしまった僕達は
なぜかいつも不安だ
夢を見れず泣いた日も
僕は君の味方

この「同じ月を見てた」も収録された2005年2月9日リリースのアルバム『h.o.p.s.』の発売15周年を記念したライブが発売日と同じ2月9日、新横浜NEW SIDE BEACH!!で開催された。アルバム『h.o.p.s.』はGOINGのアルバムの中でも1番好きなアルバムだ。その楽曲をフルで今のGOINGが演奏するというのだから、見逃してはいけないと慌ててチケットを取った。インスト曲「fire grow」をタイムトリップの入り口に、「ロール アンド ロール」「アゲハ」「サイドカー」と、アルバム通りの曲順で15年前へと誘う。当時と違うのは、ドラムの丈さんがボーカルを取っていたところを、「アゲハ」では中澤くんが、「サイドカー」では石原くんが歌ったこと。それもまた楽し。「サンキュー」のカップリング曲だった「青空コウモリ」なんて、どのくらいぶりに聴いただろうか。「この頃、歌詞が全然書けなくて」という素生くんの思い出話に、そうだったそうだったと当時の取材を思い出す。「サンキュー」は、泣きたい時にお風呂の中で必ず聴く曲だったな、とか、そんなことも一緒に思い出した。「同じ月を見てた」「サムネイル」「東京」……15年を経ても、変わらぬ輝きを放つ珠玉のメロディの数々。懐かしさと切なさと楽しさで、泣き笑いの連続だった。そして今日のステージを、3人体制になった彼らが原点回帰を綴った「the band」(2016年)で締めくくったのは、GOINGを止めずに続けてきた彼らの自信と誇りを裏付けるようで、とても良かった。

2月8日土曜日は、メリーの神田明神ホール公演へ。昨年10月からスタートした“東京圏沿線 GIG #2 ドリームキラー ~中央線編~”のファイナル公演だったが、どうしても気持ちがそこには集中しない。1週間前にあった健一くんの脱退発表の衝撃が大きすぎた。時代を行ったり来たりするセットリストの流れの中で、いろんな思い出が走馬灯のように駆け巡っていった。改めて振り返ってみると、次の予測がつかない面白いセットリストだったし、バイオリンとチェロを加えた楽曲では奥行きと新鮮味を感じたし、鬼気迫るバンドアンサンブルやガラくんの咆哮はとても胸を打った。結生くんがキーボードを叩く「林檎と嘘」や、ガラくんのギター、結生くんのキーボードによるアンコールの「匿名希望」など、見どころも満載で、非常に充実感のあるステージだった。だけどもやっぱり気持ちがそこには集中しない。「妄想rendez-vous」のイントロは、あのエッジの効いたツインギターが同じフレーズを交互にかき鳴らすところが大好きなのに。そんなことを思っては涙が出た。

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まったくジャンルの違うGOING UNDER GROUNDとメリーだが、ビクター時代、両バンドは同じレーベルにいた。GOINGが『h.o.p.s.』を出した2005年に、メリーは『nuケミカルレトリック』でメジャーデビューした。どちらも私にとって思い入れの深いバンドだ。

GOINGは3人体制になって今年1月で6年目を迎えた。今日が5人組だった頃に出した『h.o.p.s.』のライブだったということもあったからかもしれないが、脱退したメンバーの思い出話を実に楽しそうに語っていた。中でも印象的だったのが素生くんの言葉。「丈さんが抜けて、もう丈さんの曲をやることはないんだろうなと思った。新しい曲いっぱい作って、過去は捨てて、って。だけどバンドを続けていく中で気付いたのは、“いなくなった奴の曲が、俺の励みになる”ってこと」。なんちゅうタイミングで、そんな素敵な言葉を聞かせてくれるのだ、と思った。この言葉が、必要な人達に届けばいいと思う。

だがしかし、今さらこんな話を蒸し返して申し訳ないのだが、2009年4月に行なわれた、キーボードの洋一さんがGOINGのメンバーとして最後に立った日比谷野外大音楽堂公演のライブ映像を、私はいまだに見ることができないでいる。大観衆に囲まれたステージで、泣いて泣いて立っていられなくなった素生くんの姿を、もう一度見る勇気がまだないのだ。

長い間同じ夢を見て、嬉しいことも楽しいことも悔しいことも悲しいことも共に過ごしてきたのだ。メンバーが悲しくないわけがない。辛くないわけがない。悔しくないわけがない。きっと誰よりも、悲しくて苦しくて悔しいと思っているだろうと思う。そして、突然知らされた悲しみにファンの人達が打ちひしがれてしまったことも忘れてはいけない。

「同じ月を見てた」の2番のサビは、こんな歌詞で括られている。

出会ってしまった僕達へ
「どんな未来を描く?」
出会ってくれてありがとう
君に会えてよかった

メリーにとって2月8日の神田明神ホールは、バンド史上一番苦しくて辛いステージだったのではないかと思う。だからこそ、3月から始まる最後の5人でのツアーは悔いのないように、思いっきり楽しんでほしいと願う。メリーも、メリーを愛する人達も笑顔になれるように。「出会ってくれてありがとう 君に会えてよかった」と、心から伝えられるように。